マゼンタ活動日誌
誰が書くのかわからないスリル満点でお送りします。

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新刊レビュー そのよん                 


 こんばんは。あずみです。
 いよいよ週末が近づき…
 本日は4作品収録の『百年夜行』、そのトリの作品のご紹介です。


「夜叉の恋」 祈

 地獄に行きたきゃ夜叉に喰われろ。極楽浄土に行きたきゃ夜叉から逃げろ――。里に生まれた幼子ならば皆、母の名より先にその存在を頭に叩き込まれる。
 夜叉。人の血肉を喰らう恐ろしき化け物。
「そんなの本当にいるわけないじゃない。わたしたちを怖がらせるために大人たちが考えた嘘よ。そんなこともわからないの?」
 大人が聞けばなんと生意気な、と眉を顰めるだろう言葉を、桜華は悪びれることなく吐き捨てる。


 高慢で、美しくて、媚びない、十歳のあどけない少女。
 巫女姫――桜華。
 「唯一、夜叉を殺せる」といわれている金目の少女は、生意気で恐れるものなど何もない、そんな様子で夜叉の不在を少年たちに語ります。

 少女にのまれるばかりの少年たちの中で「お前、それでも巫女姫かよ!」と声をあげる者が。
 父母を夜叉に殺されたという少年、乱丸。
 かしずかれるのが当たり前だった桜華にとって、その小汚い少年は異質の存在でした。
 反発しあいながらも、どこか気になる部分を互いに持ったのでしょう、少年と少女はその夜、もう一度会うことになります。

 そこに現れたのは、夜叉。

 一夜の狂気が二人の未来を隔てた……。
 桜華のかなしい選択の果てを、後はもう渦に呑み込まれるように見守るしかない、そんな物語です。


 魅力のひとつは、スピード感。
 テーマ曲にのせて、たとえば鋭く華やかな「百年夜行」イントロのように、斬り付けるように場面が展開する。
 『DIVA』という企画、音楽×小説という部分を、すごく生かせているなあ、と思いました。
 

 そしてヒロイン、桜華の魅力。
 鼻持ちならない造形になってしまいがちで、勝気な女の子を魅力的に書くのは難しいと思うのですが、祈ちゃんの書く勝気で強がりな女の子は、それが大きな魅力になるのがふしぎ。
 周りが一目置いてしまうのも、乱丸がついつい近づいてかまってしまうのも、わかる、あやうい強さと儚さのバランス。
 「花と魁」のヒロインも素晴らしかったですよね♪

 10歳の時の彼女と、18歳の時の彼女も、あまり外から見たら変わっていないようにみえるかもしれないですが、内なる「変化」がいとしくて、ぎゅっとしたくなります。

 そして彼女の、私的一番「推し」ポイントは、告白シーンの良さ!(ちょっとネタバレ)
 たくさん恋愛小説を読んできてはいますが、ハッ、とするような、こんなに胸をつかれる告白されたら泣いてしまうわ! というのが… 「ビューティフルワールド」もそうだったんですが、私の中では祈ちゃんの小説がダントツです。
 今回も目が熱くなりました…。


 最後に味わうにふさわしい、色んな満足感のある小説です。
 祈ちゃんはそういえばトリ率が異常に高い。


 …君がため 惜しからざりし 命を捧ぐことも厭わず…


 全四作品、いずれも読み口の異なるとりどりの「赤い」短編集です。
 小説を書かれる方は特に、各人の工夫や歌詞の意味の切り取り方なども、興味深く読んでいただけるかなと思いますので、ぜひお手に取ってみてください。

 お付き合いありがとうございました!

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新刊レビュー そのさん                 
 今夜もこんにちは、祈です。
 さっそくレビューそのさんいきまっす!

 

「おしらの緋」ひより


 母方の実家に連れてこられた少女、繭。
 古い歴史と伝統を持つ名家、五鬼童家を束ねる祖母と、奔放に生きる母。
 五鬼堂家に忌み嫌われ迫害される少年カヤ。
 百鬼道中を飾る「夜行さん」――

 怪しく、静かな物語。

** 


 今回「百年夜行」というテーマを元にそれぞれ独自の物語を書きましたが、最もこの曲のイメージ通りなのがこの「おしらの緋」だな、とまず初めに思いました。
 それは歌詞をそのまま使っている、ストーリーにしている、という意味ではもちろんなく。
 物語を読む間中頭の中に「百年夜行」が流れているような、自然な感じ。
 魅力や注目点はたくさんありますが、特筆すべきは「雰囲気」と「少年少女のあやうさ」です。

○雰囲気

 舞台は東京。しかしビルの立ち並ぶ都心ではない、東京のはずれ。
 コンビニもあればスーパーもある。田舎すぎるわけでもない、私たちの住んでいるごく普通の街を想像していだければいいと思います。
 繭の母方の実家、五鬼童家は街に多大な影響力を持つ名家。
 現在五鬼童家をまとめる繭の祖母、快子がじつに喰えない人物です。静かで、でも圧倒的な存在感のある、まさに家の長。
 この地方には百鬼道中というお祭りがあり、その主役が「夜行さん」といわれる女役です。
 私はこういった伝承系の知識に疎いのですが、それでも分かるくらい雰囲気が出ています。

 娘が馬と、死にました。
 馬の首から、糸紡ぎ、
 おしら遊ばせ、絹を織る。

 ここだけでもどきどきしませんか?
 私は読んでいてとてもどきどきしました。
 語彙力がなくてうまく伝えられないのがもどかしい……
 読んでいると引き込まれる、静かで怪しい雰囲気に吞まれます。


○少年少女のあやうさ

 次に主人公、繭。
 女の子としての可愛らしさは、ありません。少女小説の主人公によくある「前向きに頑張る子」「女の子らしい女の子」とはまるで違います。不自由なく(金銭的な面で)育ち、しかし複雑な家庭環境に育った繭は実に等身大な「女の子」です。少し生意気で、傲慢で、でも大人にもなりきれず、かといって子供でもない。
 そんな等身大の女の子が実に自然に描かれています。
 次に、カヤ。
 この子がまたとても不思議で、でも魅力的。
 生意気とは違う、とても達観していて、それでいてあやうげで……読まないとカヤの怪しい色気は伝わらない! と思うのでぜひお手にとってご確認ください。
 とても冷めているカヤですが言葉の一つ一つが鋭いナイフのようで、でもそんなカヤを繭は気になって仕方ない。繭とカヤ、彼らのやりとりが実に印象的です。
 少年少女の危うげな雰囲気とでもいうのかな、とにかく読んで! 感じて! 


 伝わったかな……?
 とにかく物語の内容はもちろんですが、読み手を引き込む圧倒的な雰囲気があります。
 これは本当に読んでほしい。
 多分、読み手によって感じ方は多々あると思うのですが、少年少女のやりとりには胸がきゅっとなるはずです。


  火をもとめるは こちらへどうぞ
  




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新刊レビュー そのに                 
 お久しぶりです、祈です。
 さーてさっそく「DIVA3」レビューいきまっす!


「罪の名は、戀」あずみ


 一度は死んだ「俺」が目覚めた場所――地獄。
 力仕事は現場の役目、地獄の「俺」の仕事はお役人。
 爆乳お色気閻魔様にスカウトされた「俺」の仕事内容、それはおっとり美少女を救うこと。
 見た目は可憐なお嬢様「鹿乃」。
 地獄にはとても似つかわしくない彼女が地獄に留まるのには、理由があった。

 会いたい人がいる。
 だから、ここにいなければならない。
 なぜなら私は罪人だから。
 私は「彼」を裏切ったから――。

 鹿乃の過去、閻魔の思惑、「俺」の正体。
 けして綺麗な戀ではない。
 でもそれは確かに、戀だった。


 罪の名は――戀。


 簡単なあらすじかつあおり文はこんな感じで。
 ある日「俺」こと主人公・館野慎は地獄で目覚めます。地獄に行くような悪行をしたわけでもなければ、生前善行をしたわけでもない「俺」。そんな彼はお色気閻魔様にスカウトされ、地獄のお役人として地獄での生活をスタート! 
 幕開けはこんな感じ。
 地獄、っていうとどうしてもどろどろ、怖くて暗くて――なイメージが強いと思うのですが、このお話の「地獄」はやけに現実的です。閻魔や鬼もいれば、拷問もある。そんな描写は精緻で目に浮かぶようですが、あずみさんにしては珍しいコメディタッチな筆致とあいまってとても読みやすい雰囲気。
 まずは閻魔様がいいですね。登場回数は少ないけど、変に人間界に詳しかったり、かと思えばちょっと時代遅れの知識をもってたり――と面白いです。でもブラックな面もあって、この人敵に回したらきっと怖い。

 慎の仕事は美少女・鹿乃を見守ること。
 鹿乃には忘れられない過去があります。
 とても痛々しくて、あってはならないことで、正直その過去の部分は読んでて目を背けたくなりました。
 また、鹿乃には忘れられない人がいます。

 鹿乃の過去に向き合いながら、慎は自分の中にある気持ちに気づきます。
 でもそんな慎にも秘密があって――。

 何か一つでもいうと大きなネタバレになってしまうので、難しい。
 でもこのお話、終盤に大きなオチがあります。
 そこで「おお、そうだったのか!」と驚かされるのですが、最後の最後でさらなる大きなどんでんがえし!
 どことどこがその場面なのが、ぜひ本文を読んでお楽しみください。

 今回、今までとはだいぶ作風が違います。
 あずみさんの文章はとても精緻で細やかところが魅力的なのですが、このお話はそれ+コメディタッチな軽いノリがあってリズミカル。個人的には新しいあずみさんが見られて面白かった―!

 理子さんのお話はしっとり和風な恋物語。
 こちらはコメディ、だけどシリアスで複雑な恋物語です。
 
 恋、っていろんな形があると思うのですが、このお話でいうならば……なんでしょう。
 見守るのも一つの「恋」の形だし、嘘をつくのもある種の「恋」の形なのかな、と思いました。
 舞台は地獄。そこで繰り広げられる、静かで、でも複雑な「戀」をお楽しみください。

 
 DIVAフレーズなら……

 迷い道の遊びを……紡いでゆく





 
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新刊レビュー そのいち                 


 こんにちは、あずみです。
 本日はお知らせ1件と恒例新刊レビュー1発目です。

 まずお知らせを。
 同人誌紹介サイトstraycat様にて、先日の文フリ新刊、「花と魁」のレビューを掲載していただきました。
 創作同人界の片隅でちまちま活動している弊サークルですが、見てくださってる方がいるんだな、ととても励みになりました。レビューを寄せてくださった小泉哉女様、ありがとうございます。
 …「花と魁」、まだまだイベントに持ち込みますので、お見かけの際はよろしくお願いします。とちゃっかりCM。

 さて、新刊「百年夜行 DIVA vol.3」の収録作品を、頭から紹介させて頂きます。
 ネタバレが嫌、という方は、引き返してくださいませ。


「朱華」 理子


「取引を、しよう……鬼姫」
 自分を見下ろす異形の姫に、藤二は精一杯気丈に持ちかけた。
「俺は、この先ずっと、お前の〈餌〉になってやる。いつでも、好きなときに、この体を食らっていい。だから……」
「里の者には手を出すな、と? ――はっ」
 鬼姫は喉を反らせ、嗤うような息を吐いた。
「子童にしては大した度胸だ。……そうだな。お前の味に飽きるまでは、餌として飼ってやってもよいぞ」

 
 里長の娘の身代わりとして、化け物の「贄」となった少年、藤二。
 彼の前に現れたのは、真紅の髪と壮絶な美貌を持った、十四、五歳ほどの、美しい鬼だった―。

 目に浮かぶような色彩的なシーンからはじまるこの物語。
 雰囲気は説話集のよう、あやかしとひとが同居する、日本むかしばなしです。

 …が、しかし。
 この色っぽさ、甘酸っぱさは、むかしばなしには…ない。
 
 三年、五年。
 少しずつ体を贄として与えながら、鬼姫の元で過ごす藤二は、目覚ましく成長していきます。
 十三歳の少年が、十八歳の一人前の男に。
 反面、鬼姫の容貌は、出会った時から変わりません。

 あやかしとひと――時の流れが違うのでしょう。
 山仕事や狩りの中で筋力もつき、鬼姫を圧倒できる体格になったにも関わらず、藤二は、けれどずっと彼女の傍にあり続ける。
 喰われる痛みも、何のその。

 …愛ですね。そしてキュンです。
 そして、理子ちゃんも後書きで書いてますが、大男と少女の体格差は萌えですね。それでずっと一緒に生活してるとか…。餌と主人とか…どうしたらいい…。

 二人きりの世界。

 どうして、このまま彼らを放っておいてくれなかったのか…!

 というやきもきに苛まれる後半ですが、あんまりネタバレしても良くないのでこのへんで。

 理子さんは「強い女の子が好き」とおっしゃるのですが、私は、彼女の書くヒロインは強くないと思います。めちゃくちゃに強がって、そのためには大抵のことを耐えてしまうから、一見強く見えるけど、実のところはとても健気なひとりの女の子。
 の孤独に、やがて気付いて行く藤二が、いよいよその気持ちをぶつける… そのシーンはぜひ、本で読んでください。

 まっすぐで世慣れてなくて、少年ぽさを残したまま彼女のすべてを受け容れようとする藤二…
 とてもいい男でした。
 頭にふさわしい、華やかな恋物語。

 せっかくのDIVAなので、あの歌詞の中で、一番このお話のイメージに合うフレーズを勝手にあげるとするならば、


 「君と魅た夢が舞い散る 呼吸を忘れるほど切なく」 (@Polyphonic Branch)


 ここ。です。ネタバレぎりぎりですね。読むひとによって違う部分だと思うので、ぜひ、読み終えた方は異論反論お寄せくださいませ!

 それでは、次のレビューにバトンタッチします〜。

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